888『長州異聞』 無名塾
 「憲法改正」が云々される現在、明治憲法の制定過程を通して見えて来るものに、現代社会への某かの視点と、警鐘と、示唆を、感じていただければ幸いです。
作 ◆岡山 矢
訳 ◆
脚色◆
演出◆林 清人
出演◆
・隆 大介
・長森 雅人
・松崎 謙二
赤羽 秀之
他 無名塾
【あらすじ】
 明治二十一年七月、天皇を囲んだ枢密院では、長州の伊藤博文を中心に、「大日本帝国憲法」草案の審議が進められている。そんな折り、白井小助(号は飯山)が、山口からふらり上京して来た。小助は、若い頃、吉田松陰とともに江戸で学んだ仲で、伊藤や山県にとっては「師匠」格の人物である。維新時には薩長官軍の参謀として目覚ましい戦功も立てたが、その後は中央政界に出ることを堅く固辞した「ひねくれ者」の男だ。その男が山県の家などで、さんざんな乱暴狼藉の振舞いを見せるのである。果たしてその小助の真意や目的は何なのか…。あれこれ詮索するうち、伊藤たちが審議中の明治憲法の草案は、思いも寄らない所に行き着いていた。

【解説】
 明治憲法の草案を審議し始めたとたん、条文の中で「陛下」を何とお呼びすれば良いかが、問題となる。長州は西欧諸国に馴染みの深い「皇帝」を主張し、薩摩は日本古来の伝統を重んじた「オオキミ」を主張する。そんな折、白井小助がやって来たわけだ。伊藤たちはその小助のいざこざに巻き込まれながらも薩摩との折衷案として、陛下を「天皇」称とすることに辿り着く。江戸から明治へと時代が移る過程で、「天皇」という呼称がいまだに確固たるものではなかった事実を踏まえながらも、明治憲法で「天皇」称が用いられるようになった経緯を追った、いわばフィクションではあるが、その「経緯」がいかに民意から乖離したものであったかを諷刺した作品である。

 [戻る]