999  劇団1980

 『榎物語/こい』 

世田谷満行寺の住職・良乗が、黙しつづけた自身の罪過を、余命幾ばくも無しと観念した日に認め遺した一生涯の行状懺悔録…永井荷風作『榎物語』。
多摩川に棲む頭に一銭銅貨ほどのハゲがある大鯉。その大鯉を生涯掛けて追い続けた老農夫が語る、一人と一匹の物語…森山正行作『こい』。2010年、ルーナニアの世界一人芝居コンテストで最優秀男優賞を受賞した柴田義之渾身のパフォーマンス。
作 ◆永井荷風(榎物語)/森山正行(こい)
訳 ◆
脚色◆
演出◆藤田 傳
出演◆
山本 隆世(榎物語)
柴田 義之(こい)


【あらすじ】
 「榎物語」…に伝わる手文庫の中に収められていた文書。候文で綴られた一通の文書。「愚僧儀一生涯の行状懺悔の為、其の大略を此に認め置き候もの也」。世田谷・満行寺の住職・良乗は若かりし日、学寮の身にありながら放蕩を重ね、その帰り道に遭遇した武家のいさかいから100両を拾い持ち逃げしてしまう。その金を同僚の学僧に見られ、奪い合いから殺害…結局罪科を問われることなく生涯を全うすることになるのだが、大金を隠した榎の幹の穴をただ見上げながら、老いていく自分に何を見たか…
 「こい」・・・老夫は毎日、この多摩川の川岸から小船を出し、投網を打つ。使い込んだ愛用の投網を半日ばかりの間打ち続け、幾らかの川魚を捕らえると、老夫はいつも決って、この岸辺から川の流れを眺める。しばし疲れを癒すように、投網の余韻に浸るように、或いはまた、昔を懐かしむように…。この物語は、老夫が「俺の鯉」と呼んでいる一匹の大鯉とともに過ごした、一生涯の物語である。
【解説】
 藤田傳と、『こい』『榎物語』との出会いは、昭和40年代、劇団俳優小劇場の時代に遡ります。『こい』を小林昭二氏、『榎物語』を小沢昭一氏(演出は共に早野寿郎氏)、二人の優れた才能によって演じられた名舞台に深く関わり、その鮮烈な演劇性とさらなる可能性を自らも追求すべく、主宰する劇団1980での創作活動を開始しました。そして2004年3月、『こい』俳優・柴田義之、『榎物語』ジャズドラマー・古澤良治郎で上演。ここに、藤田傳演出による新作「こい/榎物語」が誕生しました。その後、柴田義之の『こい』は上演を重ね、2010年にはルーマニア・バカウ市で開催された「ガラ・スター・ワンマンショー・フェスティバル」に参加し最優秀男優賞を受賞。作品は確実な成長を遂げていきました。一方『榎物語』は古澤良治郎氏逝去の後、新たな創作機会が待たれていましたが、今回、劇団創立メンバーの一人である山本隆世によって公演。

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